懐かし歌謡劇場    あの人この歌 
口笛が流れる港町 小林 旭 
作詞:西沢爽 作曲:狛林正一  
昭和34年
12月発売
タイトルに“渡り鳥”という文字はないものの、「ギターを持った渡り鳥」に次ぐ、渡り鳥シリーズ第2作の主題歌であり、この歌自体も「ギターを持った〜」同様、ビクター・ヤングの名曲「遥かなる山の呼び声」(御存知「シェーン」のテーマ曲)に似ています。実際、第1作の企画段階で、製作サイドから作曲の柏林(こまばやし)さんに「“シェーン”のようなイメージの曲を」という注文があったそうです
 僕にとっては“旅情”を感じる歌のひとつで、西部劇調なのに日本の地方の港町や、九州〜北海道の美しい山や高原の風景にマッチして、男のロマンを感じさせます。

 映画のほうはというと、タイトルが“港町〜”なのに高原が舞台で、いきなり流れ者アキラが馬に乗って現われ、殺し屋ジョーと拳銃の腕を競いあうという”ありえない世界”で、第1作「ギターを持った渡り鳥」の"現実性”の部分を、まるまる取っ払ってしまったような、ひらきなおった和製西部劇です(それはそれで別の楽しさがあるとも言えるのですが・・・)。

たぶん第1作のイメージで“港町”というタイトルが先に出来たのだろうと思うけど、スタッフは西部劇的な楽しさを強調するには主人公が馬に乗って疾走するシーンが必要と考えて舞台を高原に設定し直したと思えます(主人公が“港”の資材置場でギターをつまびくシーンが一箇所あるにはあるので、タイトルもまんざら嘘ではない?けど、第1作のような港町風情は、ほとんどない映画です)。

「シェーン」から生まれた双子の兄弟なのに、兄の「ギター〜」は、旭さんがレコード会社を移籍(コロムビア→クラウン→ポリドール→ソニー)するたび再レコーディングされるのに対し、弟の「口笛〜」は再録音もなく(?)、圧倒的に知名度に差がついてしまいました。
しかし、平成の世になって、ちょっとした奇跡が起こり、ソニーレコードの「小林旭全曲集4」(SRCL3753)において38年ぶりに再録音されました。

 また、小林旭さんのファンサイトでもこの曲は人気が高く、「“ギターを持った〜”よりもいい」という声まであります。

 僕の印象でも(レコード盤として発売されたものに関しては)「口笛〜」のほうが「ギター〜」より微妙な差で出来がいいと感じます。
 
 あくまでレコードとして広く世に出たものは・・・という話で、「口笛〜」は映画のなかで流れるものより、レコードのほうがアレンジやコーラスの出来がいいのです。


 それに対し「ギター〜」は、レコードより、映画のタイトルバックに流れるサウンドトラックのほうが雄大なアレンジで、かつスクリーンの風光明媚な映像とともに印象が残るから、総合的なイメージでは「ギター〜」が「口笛〜」に勝ってます。
 
 西沢爽さんによる歌詞も甲乙つけがたい素晴らしさだけど、「ギター〜」も「口笛〜」も、なぜか3番の歌詞が映画で歌われることはありませんでした
(註※1)。

「ギター〜」の3番は主人公の恋心を歌った、やや軟弱(?)な歌詞で、主人公のクールなカッコよさが損なわれてしまうと斉藤武市監督やスタッフは思ったののでしょうか?。

この3番の歌詞は映画の後日談的な意味を持っているようです。

「口笛〜」の3番は、“思い出は忘れるものではなく、ずっと一緒に歩いてゆくものなんだ”っていうような歌詞で、映画の第1作の函館山展望台のシーンを彷彿とさせます。(主人公が死んだ恋人のことを語ったセリフ「俺は忘れた事はない、だから思いだすこともないさ」と意味的にダブります)。

「口笛の流れる港町」収録のお奨めCDは上記再録音版より「小林旭コンプリートシングルズVol.1(COCP33069-70)他のオリジナル盤を収録したものがいいと思います。
対して「ギターを持った渡り鳥」はたくさんののバージョンがあるけど、なんといっても「マイトガイ・トラックスVol.1」(COCP33207-08)の映画サウンドトラックバージョンがイチ押しです。

註※1:♪俺も〜あの娘も〜若〜いか〜ら〜 胸の〜涙も〜すぐ〜乾く〜♪と歌われる「ギターを持った渡り鳥」3番の歌詞は“渡り鳥”シリーズ内で歌われることはなかったけれど、時を経た昭和40年に、賭博師シリーズの4作目「投げたダイスが明日を呼ぶ」(牛原陽一監督)のエンディングで歌われました(この「投げた〜」は映画自体が渡り鳥シリーズへのトリビュート作品のような内容でした。)                 

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